2012年7月9日月曜日

プロフェッショナルな修理

プロフェッショナルな修理
足立紀尚著
中公文庫

修理して大切に使い続ける、それこそが究極の贅沢なのだ!!


「物を大切に」「リサイクル」
わかってはいても、今は買った方が安い場合が多い。
私もお気に入りのものを修理しながら大切に使って・・・と憧れるのだが、そもそもそんな高級品を所有していない。

この本は様々な「物の修理」にスポットを当てて取材したドキュメントである。
どのようなプロセスを経て再生されるのか、これに係わる職人の仕事ぶりを子細に見ていくことで浮き彫りにしていく。

一本500万~1000万円もするという京仏壇。
それを「お洗濯」する。
丁寧に分解し、一つ一つ点検する。
メッキをし直し、欠けたパーツを補充し、損傷している箇所を補う。
そんな気が遠くなるような作業を繰り返す「お洗濯」が、定価の半分程のコストが掛かるのは仕方のない事だろう。
一つのものをずっと何代にもわたって使い続けようとする伝統、素晴らしいではないか。

伝統工芸品だけではなく、ピアノ、鞄、自動車部品、スクーターのべスパ、絵画・・・様々なものが修理され、再生されていく。

たかだか物の修理だと、侮ってはいけない。
新品を買うより高くついても、修理して長く使う事を選択した持ち主の気持ちを汲んでニーズに合わせる。
新品同様、美しく仕上げるだけでなく、修理した箇所だけが浮いてしまわないように使い古した風合いを作る場合もある。
プロの仕事というのはこれほど奥が深く、厳しい水準が求められるのである。

いっそのこと新品に買いかえれば良いのではないか。
いやいや、修理しながら使い続けるうちに自分にとってはなくてはならない逸品になっていくのだ。
これこそが、最も贅沢な道具の使い方である。

真剣な表情で仕事に邁進する職人さん達の横顔は本当に美しい。
腕と知識と経験が重要な職人の世界、その熱意こそが日本の宝だと思う。

ほぉ、と感嘆したり、えっと驚き読み返したりしながら読んだ。
何か一つ、子孫に伝えられるような究極の逸品を所有したくなる、そんな本であった。
先立つものを貯めるのが先決なのだが。

0 件のコメント:

コメントを投稿

閲覧ありがとうございます。コメントしてくださったらうれしいです。