地上の飯 皿めぐり航海記
中村和恵著
平凡社
比較文学論の研究者が世界中を回って体験したこと、考えたことを綴ったエッセイ。
1966年生まれの著者は、現在明治大学教授、比較文学論の研究者。
題名から、世界中で珍味を食べ歩く抱腹絶倒エッセイなんだろうなと勝手に思い込み、読み始めた。
しかし、そんなお気軽な内容ではなかった。
食と、文学・文化・冒険譚を絡ませたエッセイで、知的好奇心を刺激してくれるような、そんな本だった。
ただ、素材は大変面白いのだが、ご本人が真面目な方なのか、文章が少々読みづらい。
ときに哲学的になったり、修飾過多の長文になったり。
いや、それでも結構。なかなか興味深い内容なのだから。
幼い頃憧れていた外国の本の中に出てくる「パンの実」を食べたり、
お粥から幸田露伴やチェーホフに言及したり、
各国のタクシードライバーとの困ったやり取りなど、
興味深い体験談が載っている。
そうかと思えば、捕鯨問題、ふりかけの存在意義について考察したりと、あちこちに話題が飛んでいく。
私が興味を持ったのは、「虫の栄養価」。
よく、「貴重なタンパク源」で栄養価が高いとは言われているが、芋虫(ウィチティ・グラブ)は400㎉/100gで、タンパク質のみならず、脂肪・炭水化物・鉄分・カルシウムも豊富だという。
ちょっと食べてみたくなるではないか。
いや、成長期は過ぎ去り、横へと成長中の私には、高い栄養価は必要ないのかもしれないが。
そして、ドイツの人類学者の本に「日本人の味」について触れているのを、著者は発見する。
人食い人種へのインタビューで、「白人の肉は匂いがきつすぎるし、塩辛い。日本人の肉の方がおいしい。」と書かれていたのである。
そうでしょ、そうでしょ、日本人は勤勉で優秀だからと、読みながら鼻が高くなりかけたが、それって喜んでいいものなのか?検証はできないが。
色々な場所へ行かれる方なので、これからも是非、武勇伝をお聞かせ願いたいと思った。
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