地層捜査
佐々木譲著
文藝春秋
佐々木譲氏による警察小説の新シリーズ。派手なアクションもキャリア組も出てこないが、深い人間ドラマが描かれていた!
2010年、公訴時効が撤廃された。
捜査一課の水戸部は、上司に暴言を吐いたことで謹慎処分を受けていたが、過去の未解決事件を担当する部署に配置換えになった。
元都議会議員の有力者から圧力をを受けて、15年前の「老女殺人事件」の再捜査が開始される。
殺された老女は、元芸妓のアパート経営者であった。
地上げのトラブルから殺されたのか、それとも、被害者の過去に理由があるのか・・・。
事件当時捜査本部にいた退職刑事・加納が、相談員という立場で水戸部とコンビを組むことになった。
たった二人で過去の事件に向かっていく―--。
この作品は、「荒木町ラプソディー -地層捜査-」という名前で舞台化もされている。
四谷荒木町。
現在でも昭和の雰囲気を色濃く残した町。
その町が忠実に再現されているので、土地勘のある方は頭の中で地図を描きながら楽しめる作品だろう。
残念ながらあまり詳しくない私は、細かな街並みの描写に前半は退屈気味だった。
しかし、中盤からは引き込まれてしまう。
地層のように重なっている過去の出来事。
それを地道に聞き込み、歩き、まさに地層を掘り起こして捜査していく人間ドラマに仕上がっている。
この本に派手なアクションはなく、キャリア組も出てこない。
部署同士の軋轢もない。
過去の捜査記録と現在残っている証人の証言を基に、狭い町を歩き回りながら核心に迫っていくという、地味で静かな警察小説である。
それを、徐々に人間模様が浮き彫りにされる長編作品に仕上げているのは、さすが警察小説の第一人者である著者だからであろう。
また一つ楽しみなシリーズの誕生である。
キャリア組が出てこないというのは珍しいですよね?
返信削除警察小説はああいう腹が立つ人物が出ると面白かったりしますw
そうですよね。腹黒い人が話を面白くするのですが、今回は警察側には出てきませんでしたねぇ。
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