2012年4月10日火曜日

アミダサマ

アミダサマ
沼田まほかる著
新潮文庫
読者を捉えて離さない。やはり「まほかる」は凄い!!

サラリーマンの悠人は頭の中に聞こえてくる「コエ」に導かれ、廃車置場へと向かう。
そこで僧侶の浄鑑に出会い、古ぼけた冷蔵庫を見つける。
中には、裸で丸まっている幼子がいた。
その少女「ミハル」は浄鑑の寺で大切に育てられる。
そして、寺周辺の集落では凶事が起こり始める・・・

ミハルを片時も忘れられない悠人。
その悠人に、暴力をふるわれながらも愛を注ぎ続ける頭の弱い律子。
ミハルを可愛がり大切に育てる浄鑑の母「カアサン」。

不思議な力の出てくる話ということから、ホラーサスペンスといえるのだろうが、
私には、登場人物たちがが奏でる不器用な愛の物語のように感じた。


冒頭から、何か恐ろしいことが起こるのではないかという薄気味悪さを感じながら読み進める。
しばらくすると、何か起きているのだろうけどそれが何なのかよくわからないままラストへと向かう。

登場人物が不思議な力を持つ事に、何の疑問も持たず、恐怖も感じず、それが当然であるかのようにすら思ってしまう。
律子に暴力をふるうシーンでも、それはゆがんだ愛の形であり、自分ではどうすることもできないもどかしさからくるのだろうと、不思議と嫌悪感を感じなかった。
冷静に考えるとおかしいのだが、なぜかそうだったのである。
そこが、著者のあり得ないことを読者に納得させてしまう筆力のなせる技なのだろう。
やはり凄いと感嘆してしまう。

最後はなぜか感動的でもあった。
自身も僧侶であった著者の経験からか、仏教的な世界観が根底にある、なりふり構わぬ深い愛の物語であった。

好き嫌いの別れる著者の作品であはあるが、この「アミダサマ」は他のものより「イヤな感じ」が少ないように思えた。


ただ、「猫鳴り」は猫の死を扱っているということで、夜眠れなくなったらどうしようと、いまだ手を出せずにいる。

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