夏天の虹
みをつくし料理帖
髙田郁著
角川春樹事務所
みをつくし料理帖第7弾。どうしてこうなるのだろうと、空を見上げて澪を想う。
幼い頃に両親を亡くし、天涯孤独の主人公・澪。
故郷・大坂での料亭修行を経て、今は江戸・神田の料理屋「つる家」の調理場で腕をふるう。
天性の味覚をもち、日々料理に精進している。
店主を始め温かい人々に囲まれながら、次々と困難が澪を襲う。
こうしてこのシリーズは始まった。
少女マンガのようで大変読みやすい。
私は、天賦の才・プロの仕事という意味で「ガラスの仮面」のようだと思っていた。
「おしん」「キャンディ・キャンディ」のようだと言う方もおられてなるほどと思った。
江戸の話、料理の話、ということで軽い気持ちで読み始めたこのシリーズだったが、
自分でもここまではまるとは思わなかった。
料理を丁寧に作る過程が読んでいて楽しい、おいしそう、切ない恋、江戸の人情が心に響く・・・
でも、このシリーズの魅力は、それだけではないのである。
1~5弾までは静かに話が進み、このまま進んでいくのだろうと思っていたが、
前作の6弾で話はいきなりクライマックスへと動き、大きな選択を迫られた澪。
そしてこの第7弾では、衝撃が続き読者の心を大きく揺さぶる。
男たちがそれぞれの心意気を見せる物語でもあった。
幼い頃澪は、占い師に「雲外蒼天」--困難は多いが努力して精進すればいつか蒼い空が望める--
と言われ、実際その通りに災いが降りかかってくる。
それでも澪は懸命に、心に決めた道を目指して精進している。
しかし、自分の努力だけではどうにもならない困難も世の中にはたくさんある。
予想もしなかった展開に思わず「うそっ!」叫んでしまい、自然と涙がこぼれる。
このシリーズを読んでいてここまで辛いとは思わなかった。
これからも澪は心星目指して困難な道を進んでいかなければならないのだろうか。
空を見上げて澪を想う。
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