2012年3月23日金曜日

私の箱子

私の箱子
一青妙著
講談社
一青窈さんの姉であり、自身も歯科医・女優として活躍している一青妙さんの半生を振り返ったエッセイ。


著者の一青妙(ひとと たえ)さんは、「ハナミズキ」のヒット曲で知られる歌手の一青窈(ひとと よう)さんの6歳違いのお姉さんであり、ご自身も都内で歯科医院を営む傍ら、舞台を中心とした女優として活躍されている。

この本は、30年近く住んだ日本の家を解体するところから始まる。
解体に先駆けて荷物の整理をしているときに、赤い和紙が貼られている箱子(シャンズ・中国語で箱の意)を見つける。
中には、手紙・日記・図画工作・誕生カード・・・・たくさんの思い出が詰まっていた。

「台湾五大財閥」の一つである顔家という名門の長男であるお父様と、日本人のお母様の長女として生まれ、台湾と日本を行き来しながら育った著者。
そして、中学2年生の時にお父様を、大学生の時にお母さまを相次いで亡くすというつらい体験をした。

箱子の中の手紙や日記を読み進めながら、過去を振り返る。
大人の会話をしたことがなかった父の足跡をたどり、日本や台湾の知人を訪ねる。

台湾の顔家という名家に生まれ、日本人として学習院に通っていた少年。
終戦を境に、台湾人となり、戦前と戦後に価値観が急転する衝撃。
台湾と日本のアイデンティティーに翻弄された「顔恵民」という一人の人間を探して行くのである。

手紙の内容から、ご両親の優しさ・苦悩、そして何より温かい家庭の様子が窺え、羨ましく思った。
台湾の食事や親戚たちの様子もなかなか面白かった。

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