2012年2月22日水曜日

贋作に明日はない

贋作に明日はない
ヘイリー・リンド著
岩田佳代子訳

画家兼疑似塗装師のアニーが活躍する贋作エンタメミステリーの第2弾。またまた事件が多数勃発し、大騒ぎ。果たして騒ぎは無事に収まるのだろうか?



伝説の贋作師である祖父。
その祖父に鍛えられ、真偽を一瞬にして見抜き、贋作の腕も一流の主人公アニー。
今は支払いに追われながら画家兼疑似塗装師として1日12時間働いている。
長身で高級スーツを身にまとう堅物お金持ちの大家さんと、
正体不明の遊び人風でセクシーな美術品泥棒のイケメン二人。
個性豊かな友達や新たに登場したアニーの母。
それらの強烈な面々が、前作同様活躍(?)するシリーズ第2弾。

アニーは、冒頭でいきなり複数の事件に遭遇してしまう。
1.出かけた画廊のオープニングパーティーで木にぶら下がっている彫刻家の死体を発見する。
2.同時に会場の隣の美術館ではシャガールの絵が盗まれる。
3.さらに、会場で富豪夫人から、所有していた作品を取り返すように頼まれる。
この三つの事件にファッション、アクション、ミステリー、そして恋愛が絡むノンストップエンタメミステリー。

作者は、疑似塗装師である姉と、アメリカ女性史の歴史家である妹の二人のユニット。

とにかく最初から最後まであわただしい。
ドタバタぶりも前作よりパワーアップしている。
「えーこういう展開!」と驚いたり、笑ったり、私の方も忙しくなる。
一息つくタイミングが見つけられず、分厚いながらも一気に読み終えてしまった。

私が一番気に入ったシーンは、パーティに着ていくドレスを高級店で買うところ。
ずらっと並ぶドレスを友人たちに見たててもらい、胸も背中も開いている黒のドレスをチョイスする。
普段は汚れてよれよれのオーバーオールだけど、キメるときはバシッとキメるんだからと
アニーに喝さいを送る。
女子はやっぱりこういうの好きだよね♪と思う。(私だけ?)

この本で楽しみにしていたのは、アニーの類まれなる才能と美術品にまつわる蘊蓄話だった。
だが、アニーの修復師としての腕前や芸術の才能を見事に披露するという場面が少なくて、
一芸に秀でているところをもっと見せつけて欲しいと思った。
巻末に「ギルディングガイド(金箔貼り)」が付いていてとても興味深く読めたが、
作中には蘊蓄話があまりなく残念に思った。

ジェットコースターに乗せられ、悲鳴を上げている間に終わってしまったようだった。
絶叫マシーンはキャーキャー言いながらも、また乗ってしまいたくなるものである。

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