境遇
湊 かなえ著
双葉社
「告白」の湊かなえさんが、ドラマのために書き下ろした本。児童養護施設出身の二人が巻き込まれる事件・・・それぞれの運命は?
児童養護施設から、親切な養親に引き取られ、今は県会議員の夫と5歳の息子とともに
幸せな家庭を築いている陽子。
施設で育ち、新聞記者となり頑張っている天涯孤独の晴美。
親に捨てられたという共通点がある36歳の二人は、読み聞かせのボランティアがきっかけで知り合い、
親友となる。
陽子は、晴美の話をヒントに絵本を出版し賞を取ったことで注目される。
夫の選挙も近いある日、一人息子が誘拐され、「真実を公表しろ」という脅迫状が届く。
はたして犯人は・・・
晴美と陽子それぞれの視点から交互に話は進んでいく。
この本は、2011年12月に放送された、朝日放送創立60周年記念スペシャルドラマ「湊かなえミステリー『境遇』」のために書き下ろした作品である。(陽子役に松雪康子、晴美役にりょう)
著者は、インタビューで「人と人との繋がり」と「人生は自分で作っていけるものだ」をテーマにしていると語っている。
また、通常版と絵本付特別版の2種類あり、特別版には作中に出てきた「あおぞらリボン」の絵本が付いている。
「告白」で衝撃のデビューを飾った湊さんの小説ということで、先入観なしで読もうとしても、
読む前から期待してしまう。
ところが、ボリューム的にも、内容的にもさらっと読めてしまって少し肩すかし感があった。
つまらないわけではない。私には犯人はわからなかったので(考えなかったともいえる)驚いた。
飽きることなく一気に読めた。
ただ、大きな衝撃もなく、心に響く物もなかったのである。
きっと、湊さんは優しい方なのだろうと思う。
ドラマ化を見据えて、締め切りを考え、こういう作品になったのだろう。
小説はもともとフィクションなので、矛盾点や都合のよすぎる展開があるが、
それを作者の筆力で補い、読者を夢中にさせ矛盾点を気にならなくさせるものだと思う。
そして、湊さんにはその力があると思うが、話が短すぎてそれを生かしきれてないのではないか。
これを長編にしたらきっと読者を引きずり込むような作品になったのではないか。
(単なる一読者なのに、僭越なことを申し上げてすみません。)
そうはいっても、湊さんの作品はこれからもきっと読むだろう。
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