江戸の可愛らしい化物たち
アダム・カバット著
祥伝社
江戸時代の娯楽本・黄表紙で活躍したおちゃめな「ばけもの」たちを紹介した本。どこの世界も大変だなぁと思いながら楽しく気軽に読める。
江戸時代後期に流行った娯楽本「黄表紙」。絵と文字で面白おかしく世相や流行を風刺し、
大人気だった。
その中で大活躍した「ばけもの」たちを解説した本。
著者はアメリカ生まれの大学教授。専攻は日本近世文学。
新書という形態、大学教授という肩書から、研究書的な本だと思って読み始めてびっくりした。
こんな楽しい本だったとは!
当時の絵が掲載され、そこに著者の解説が加わる。
絵の周りには所狭しと文字が書かれているのだが、
ほとんどひらがなであるにも関わらず、悲しいかな私には読めなかった。
そこに著者の解説がつくのだが、それが現代風にアレンジされていて面白いのである。
例えば
「ヒット商品」という項目では、
ばけものは現れるときに生臭い風が吹くという決まりがある。
未熟者や田舎者にはそれがなかなか難しいので、箱の中に腐った魚を入れて風を出すという商品を開発する。ところが、ニオイの調節ができないため、ばけものにとっても臭くて結局廃番となってしまう。
「男のエステ」という項目では、
鬼のイメージは赤か青に決まっている。だが、個性を出したい鬼は、エステできれいに色を染め直す。
ギザギザの顎をヤスリで削ったり、閻魔さまが舌を抜くのに使う釘抜きで毛を抜いたり・・・
鏡を見て自画自賛しながらも、「なぜもてぬ」と嘆く。
私の一番お気に入りは「美容整形」
透明感溢れすぎる肌の幽霊。ニンジンをたくさん食べて人間の肌に近付ける。
河童も流行のヘアスタイルにしたいが、頭上のお皿が邪魔で、おかっぱ頭しかできない。
天狗は、高い鼻が気に入らず、わざと梅毒になれば鼻が自然に落ちると考える。
そんな楽しい話が48項目掲載されている。
ばけものたちは今で言うと大人気のアニメキャラクターだったのかもしれない。
著者の解説がとても上手く、「ばけものの世界も人間界と同じく色々苦労があるのだなぁ」と思いながら、ニヤニヤ笑いをしてしまう。
江戸を題材とした小説に出てくるばけものも出てきて、「あっ、これあの本に出てきた」とうれしくなる。
掘り出し物の楽しい本であった。
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