山田 和著
文春文庫
現代日本料理の創始者である北大路魯山人は、陶芸、書、篆刻など様々な分野で活躍した。
著者の父は、魯山人と親しく交際し、家の普段使いの食器は全て魯山人作だった。
ところが、魯山人の死後、父は所有の品をほとんど処分してしまう。
関係者80人超への取材、現存資料のほぼすべてにあたった600ページもの渾身の作。
第39回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作品。
すごい。
読むのも大変だったけど、著者はどんだけ苦労したの?
魯山人と聞いて、何をイメージする?
頑固な陶芸家?
こだわりの食通?
ってだいたい「美味しんぼ」の海原雄山のことしか頭に浮かばなかったけど。
なんとなく、金持ちのボンボンで子どもの頃からお手伝いさん付きで、豪華な食事食べ放題って思ってた。
でも、不幸な生い立ちで、本当の父が誰なのか未だにわからないなんて。
6歳の幼さで養父母に気に入られようと炊事を買って出る。
しかも、褒めてもらいたくて、どうしたら美味しく炊けるか研究までする。
数種類のコメを混ぜる・水きり時間・炊きたてにこだわる・・・いまどきの主婦だってそんなことは考えずに惰性で炊いてるのに。
そこが魯山人たるゆえんだろう。
そして、美の追求。天才的な空間把握の才能と、手先の器用さもあったのだろうが、薄幸の育ちも関係しているのではないかと思われる。
書・篆刻・そして陶芸。誰もが認めるその才能。
だけど、頑固おやじ。
今近くにいたらどうだろう?
やっぱり才能は認めても、ついていけない、なんで怒鳴られなきゃならないの?って遠ざけるだろうな。
バブルの頃に生きていたら、おもしろかったのでは?
豪快に飛行機で世界中飛び回って、美味いもの探しなんてしてそう。
実際に魯山人の作品を見てみたい。
これだけ作品を残していたら、店の看板等で見たことがあるのかもしれないけど。
でも、著者はすごい。
魯山人の器ばかりで食事していたなんて。
それも凄いけど、この膨大な資料を整理して、この本を書き上げたのはもっとすごい。
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