2013年5月31日金曜日

銀二貫

高田郁著
幻冬舎



寒天を食べると痩せる・・・いつだったかそんな情報に踊らされて、毎食熱いお茶に粉寒天を溶かして飲んでいた。
効果がなかったので、いつの間にかやめてしまったが。
別に寒天が悪いわけではない、情報に振り回された私が悪いのだ。

本書は、大阪の寒天問屋を舞台にした時代小説である。
まもなく還暦という寒天問屋の主・和助は、ある日仇討ちの現場を目撃する。
父親と息子の前に若者が立ちはだかり、「仇討ちである」と父親を斬りつけたのだ。
和助は、残された息子・松吉をその若者から銀二貫という大金で救い、寒天問屋で丁稚として修行させることにした。
慣れない厳しい生活、火事・・・様々な困難に立ち向かいながら、松吉は大きく成長していく。

登場人物たちの前に次々と不幸な出来事が襲いかかり、これでもかと痛めつける。
「みをつくし料理帖」シリーズでもそうだが、高田郁さんはどうして彼らをこんなにも辛い目にあわせるのだろうか。
お陰で読者も読みながら、一緒に苦しむことになるというのに。

転んでは立ち上がり、潰されては息を吹き返す。
その不屈の精神と強い信念に涙し、そして己の怠惰を猛省したくなる。

この文庫本の巻末に、高田郁さんの友人である水野昌子さんの解説が載っていた。
それによると、高田郁さんは「非効率の人」であり、作品に登場する料理を全て作り、ささやかと思うようなことを丹念に調べ尽くすのだという。
そういった膨大な労力のお陰で、読者は美味しそうな料理の描写に舌なめずりし、苦しみながらも助け合う人々に感動できるのだろう。

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