忘れられた日本人
宮本常一著
岩波文庫
私たちは日本人の心を忘れてしまったのだろうか?辺境の村を歩いて生活の話を聞いた著者の代表作。この本を読んで「豊かさ」とは何かを考える。
本書は、著者が昭和14~25年頃にかけて各地を歩き、古文書をあたり、村の古老たちから聞いた生活の話をまとめたものである。
隣が何をしているかわかるすぎるくらい狭い村社会で、仲良く暮らしていくため、寄合い制度が生まれた。
年齢別グループに分かれ、取り決め・話し合い・情報交換などをしていたという。
ときに悪口大会になって日頃のうっぷんをはらすが、その場かぎりで、あとは何事もなかったように暮らす・・・なんと合理的な方法だろうと感心する。
一日中よく働き勤勉な一方、歌を歌いながら仕事をするなどストレス解消法も様々だ。
その中でも性に関して
・歌の掛け合いで、男女が体を賭けて争う。
・盆踊りの歌に性に関する歌詞が多い。
・夜這いは女の方もおおらかに受け入れ、親もあまり仲良すぎる時に咳払いをする程度だった。
との記述があり、『盆踊り 乱交の民俗学』にも書かれていたが、改めて性のおおらかさには驚かされる。
その他、昔の道具や食べ物など生活の様子が語られていてとても興味深い。
我が子を人に預ける「貰い子」をする母の気持ちに胸が熱くなり、「歳をとっても働いておらんと気がおさまらん」という老人の言葉に己の怠惰を恥じる。
特に「土佐源氏」という章で、80歳の盲目乞食が語る女性遍歴は「おじいちゃ~ん、もっとお話聞かせて~」と言いたくなるような、小説のような面白い話だった。
借りた本だが、これはぜひ購入したい。
そして、手元に置いて何度も読み返したい、私にとって大切な一冊となった。
※大学の図書館で借りたのだが、茶色に変色して表紙もなくボロボロだった。
おまけに懐かしの返却期限票まで付いていて、読み続けられていることになんだか嬉しくなった。
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