2012年9月5日水曜日

英雄はそこにいる

英雄はそこにいる
島田雅彦著
集英社

その男は稀代の犯罪者なのか?それとも英雄なのか?手に汗握るハリウッド映画のような一冊。




シャーマンの末裔であるナルヒコは、修行を重ねた特殊能力により、未来を予知したり死者と会話することが出来る。
警視庁で迷宮入り事件の再捜査を専門にしている穴見警部は、そんなナルヒコに「捜査に協力して欲しい」と頼む。
重要未解決事件の中でも手掛かりの少ない、互いに無関係に見えた五つの事件は、特殊な遺伝子D4を持つ男が絡んでいる事がわかった。
そしてその背後には世界経済評議会・通称「ブラックハウス」という組織が見え隠れする。
果たして、D4はブラックハウスの手下なのか?それとも・・・?

本書は、ナルコシリーズ第1弾『カオスの娘 シャーマン探偵ナルコ』に次ぐ第2弾らしい。
「現代に甦るヘラクレス神話」でもあるという。

前作も未読で、そんな知識もなく読み始めたのだが、十分楽しめる内容だった。
「シャーマン」とか、「特殊能力」とかそういう話が進んでいくのだろうと思いながら読んだが、ストーリーはどんどん広がって予想外の方向に向かっていく。

政治・経済・宗教・オカルトと様々な要素が絡まった壮大なストーリーで、誰が味方で誰が敵なのか分からないまま、手に汗握る展開が続く。
スピード感もあり、まるでハリウッド映画を見ているようであった。

正直、心の琴線に触れるとか感動するような類の話ではない。
特殊な遺伝子の話も唐突感があり、最後まで読んでもなぜ特殊な遺伝子でなくてはいけないのかわからないままだ。

ただ、読んでいる最中は物語に夢中になれ、他の事を考えなくて済むような、そして読み終わっても後を引かない一冊であった。
私はたいへん面白く読めたのだが、好き嫌いがはっきりする本だろうなと思う。

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