尼さんはつらいよ
勝本華蓮著
新潮新書
清く正しく美しいというイメージの尼さんの世界。なるほど、どこの世界も色々あるのだなぁ。
1955年生まれの尼僧である著者は、大阪の仏門とは関係ない家庭で生まれ育ち、専門学校を経てデザイン事務所へ就職する。
その後独立し十分な収入を得るが、あるきっかけから仏門に入る。
そんな著者が、修行・尼の世界について語った本。
尼さんといえば、瀬戸内寂聴さんのイメージが強い。というかそれくらいしか思いつかない。
漠然と、剃髪で年輩で「人生酸いも甘いも噛み分けた人生の達人」というイメージを持っていた。
この本によると統計上、仏教の「教師」という資格を持つ女性は約16万4千人もいるという。
(うち立正佼成会6万4千人、真如苑4万8千人)
ただ、そのほとんどは「なんちゃって尼さん」で、尼寺でお経を唱えながら静かに生きるというような方は数少ないらしい。
尼さんの定義も難しい。
寺に住んで僧籍を持つ人、修行した人、衣を着て剃髪している人、法要でお経を唱える人・・・門外漢の私は考えたこともなかった。
著者自身も「お寺に所属はしています。普段は、学校で教えたり、研究とか原稿とか書いたり。で、マンションに住んでます」という。
どこからどこまでが尼さんというのか、「自称尼さん」もたくさんいそうに思える。
著者が経験した修行も軍隊なみの厳しさで、体罰も当たり前の世界、そして、強烈な男尊女卑の世界であったという。
人の道を説くはずの僧らしくもない。
尼寺に入り、精進料理を作ろうと野菜のありかを尋ねたら、冷凍庫にあるミックスベジタブルだけだったというのも、ちょっと驚く。
また、尼僧の場合大きな法要に出られないことが多いという。
男僧とは声の高さが違うため、導師の声の高さに合わせて唱えるときに、男女で音程を合わせるのが難しいのだ。
混声合唱団だっていいと思うのだが。
辛いことがあって「いっそ尼にでもなるか」という現実逃避はしない方が無難である。
やる気があればあったで、日本仏教界では空回りしてしまう。
知られざる尼さんの世界の暴露本としては面白く読めた。
俗物の私は、一生俗世で暮らそうと思う。
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