2013年3月7日木曜日

本にだって雄と雌があります

本にだって雄と雌があります
小田雅久仁著
新潮社

本棚に見慣れない本が突然現れたら・・・それは本の子供「幻書」かもしれません。



本にも雄と雌があり、子供まで産む。
そうやって生まれた本を祖父は「幻書」と呼んだ。
しかも幻書は、鳥のように羽ばたきながら飛ぶのだ。

祖父の家に泊まった時、「書物の位置を変えるべからず」との掟を破り、
エンデの「はてしない物語」を、カミュの「異邦人・ペスト」とサルトルの「嘔吐・壁」の間に
不用意に押し込んでしまった。
すると翌朝、「はてしなく壁に嘔吐する物語」という本が生まれてしまった!

そんな体験をした博が息子に、大学教授で書物蒐集癖のある祖父・輿次郎と女流画家の祖母・ミキを始めとした家族や幻書について語った物語である。
「あんまり知られてはおらんが、書物にも雄と雌がある。であるからには理の当然、人目を忍んで逢瀬を重ね、ときには書物の身空でページをからめて房事にも励もうし、果ては後継をもこしらえる。」
そんな文章から始まる本書は、あまり区切りがなくぎっしり詰まった活字、そして癖のある文章が延々と続くので、読み始めは戸惑ってしまった。
また、合間合間に本気なんだか冗談なんだかわからないような言葉やダジャレが頻繁に挟まれ、話もあっちへ行ったりこっちへ行ったりと脱線し、困惑してしまう。

しかし、すぐにその語りかけるような独特の文章にも慣れ、そのうちニヤニヤ・クスクス、その後声を上げて笑うようになっていた。
まるで、バカバカしい冗談を言い続けている人の話を聞いているような気分で読んでいた。

おかしいだけでなく、戦争中の話、不思議な話、様々なエピソードが積み重なり、読み手を遠くの広い世界へと連れて行ってくれる。
どこが本筋なのかよくわからないまま、笑ったりホロリとしたりしていると、最後には大きな感動が待っていた!

幻書を題材に、点が線になりそのうちどんどん広がって最後はボルネオまで・・・
そんな本と家族への愛にあふれた、温かいファンタジーだった。

※なお、この本を読み終わると、
  ・本棚に見慣れぬ本があるか確認したくなる。
  ・本の並び方を考えてしまう。
  ・死後、ボルネオに行きたくなる。
  ・象を見ると足の本数を確認してしまう。
  ・しゃっくりが出る度に、100年もしゃっくりが続いたらどうしようと心配してしまう。
 などの症状が出ますのでご注意ください。

2013年3月5日火曜日

藝人春秋

藝人春秋
水道橋博士著
文藝春秋

三島由紀夫に似た文体・・・かどうかはわかりませんが。



お笑い芸人でありながら、大騒ぎするタイプではなくいつもどこか冷めた目をしている。
健康オタクだというのもお笑いっぽくない。
そう思っていた、たけし軍団の浅草キッド・水道橋博士

石原慎太郎氏から突然電話があって
「君の文体はな、三島由紀夫に似てるんだ」「純文学を書きなさい。私が見てあげるから」
と言われた・・・
そんなエピソードを週刊誌で見かけてから、ずっと気になっていた。

本書は、水道橋博士から見た14人の有名人たちと、いじめ問題について書かれた「TVの裏側の物語」である。

軍団の先輩で度を超えた大真面目と大馬鹿がそのまんま同居している「年中夢中」な 東国原英夫氏
岡山大学附属中学で同級生だった「日本のロック界に革命を起こした」甲本ヒロト氏

草野仁氏 の章では、
頼まれて出場した長崎県の相撲の国体予選で相撲部でもないのに優勝する。
初めて体験したレスリングで大学のレスリング部の部員に勝つ。
高2の時、100m走で11秒2を記録した・・・
そんな東大卒の文武両道なスーパーひとしくんのふしぎを発見していく。

「私がロックフェラーセンタービルを売った男です」「オレがあのロックフェラーセンタービルを買った男なのね」と言い合う自意識過剰な国際弁護士・湯浅卓氏 と脳機能学者 苫米地英人氏 の大言壮語なエピソードでは抱腹絶倒させられる。

一方、稲川淳二やいじめ問題についての章では、悩み葛藤しながら綴っている様子にホロリとさせられた。

その他、あっけらかんとした 堀江貴文、デタラメでハチャメチャな異才 テリー伊藤、一時期懇意にしていた ポール牧・・・など幅広い個性豊かな面々について、驚異的な記憶力と冷静な観察眼で分析し、石原慎太郎氏絶賛の文章力で読者を惹きつけ、芸人の巧みさで笑かしてくれる。

文体が三島由紀夫に似ているかどうかは全くわからないが、笑いながら読んでいても、彼の苦悩や悲壮感が伝わって来る。

息子に武(たけし)・娘に文(高田文夫氏より)と名付けるほど、殿や高田文夫氏の才能を心から崇拝し、「あなたに褒められたくて」お笑いをやっているという。
しかしどうやっても自分には越えられないと諦め、達観しているその姿勢に感動を覚えた。

お笑いの世界では、この先も彼らを越えられないのかもしれない。
いや、越えられないだろう。
でも、もうこのままで十分なのではないだろうか。
文章力ではもう大幅に超えているのだから。

2013年3月3日日曜日

本屋さんで待ちあわせ

本屋さんで待ちあわせ
三浦しをん著
大和書房



本や漫画好きで知られる三浦しをんさんの書評集。
本が好きだというのは知っていたが、いやぁここまで好きだとは知らなかった。

ほかにするべきことあるだろ、掃除とか洗顔とかダイエットとか。と言いながらも本を読み、ベッドの半分が本で埋まっているのだという。
そうなのか。
そこまでして初めて「読書家」というのなら、私なんて到底足元にも及ばない。

掲載されている本はいわゆるベストセラーではなく幅広いジャンルで、しをんさんの好みがよくわかる。
人様の本棚をへえ〜とかふ〜んとかいいながら覗いているような気分で、ワクワクしながら読み進めた。
星新一、あさのあつこ、穂村弘、加藤鷹・・・もちろん漫画やBLまで網羅されている。
とくに「東海道四谷怪談」には多くのページが割かれており、色々と教えてもらった。

しをんさんがバイトしていたという古書店。移転前の店舗にはよくお世話になっていたので、ちょっぴり縁があるなぁと勝手に思い嬉しくなった。
そして、ゴリラ系の男性にたまらないエロティシズムを感じる私としてはとの文章を見たら、うわぁ、私と一緒だぁ!と余計親近感が湧いてきた。
でも、BLには興味は持てないのだが。

読んだことがある本も何冊かあったが、全く知らなかった本が多く、読みたい本が増えてしまうという危険な本でもあるので注意が必要だ。

本は人間の記憶であり、記録であり、ここではないどこかへ通じる道である。
特別な作法も充電器も必要なしに、時間と空間を超えた異世界へ、私たちを連れて行ってくれる。
まさにその通り。
私もしをんさんに異世界へ連れて行ってもらってますよ。


※すぐにでも読みたいと思った本
「少将滋幹の母」(谷崎潤一郎)
「サンカとともに大地に生きる」(清水精一)
「花宵道中」(宮木あや子)
「執事と画学生、ときどき令嬢」(小林典雅)